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島なみクラブ: 日本列島弧の覚え書(Dr.Madaranov)

島なみクラブ: 日本列島弧の覚え書(Dr.Madaranov)_f0169942_1753249.jpg日本は、ユーラシア大陸の東端に防波堤のように張り出した北はカムチャッカ半島南端の千島列島から沖縄を含む南西諸島へと連なり南のフィリピン諸島にまで至る広大な列島弧のほぼ中央を成しています。
日本列島はその面積約23万平方キロの本州島と5つの主島からなり、この主島に付属する大小さまざまな島嶼は北海道263、本州1546、四国472、九州1420沖縄221で合計3922を数え、とりわけわたしの生地にほど近い本州四国間の瀬戸内海には約500の無人島を含む多くの島々が点在し、独特の景観を保っています。
これらの島々は石器時代より活発な人々の移住や往来があり各所で埋蔵文化財の報告がなされてきており、やがて卓越した航海術やハイテクを身に付けた集団がこれらの島々を拠点に活動を展開し、古代統一王権の成立に甚大な貢献を果たしてきました。しかし、これらの氏族の勢力拠点となった約68の主だった島々も律令制度の完成とともに格付けが成され、壱岐・隠岐は下つ国であり遠国とされ、北陸道の佐渡は、遠国であっても中つ国とされ瀬戸内海の淡路島は近国であるにもかかわらず、下つ国と位置付けられることとなりました。下つ国は政治犯の流刑地とされることで後世にもしばしば登場します。しかし、伊豆の三宅島をはじめ多数分布する「延喜式」所収の式内社の数が、下つ国と既定された壱岐国には24座、対馬国には29座あり薩摩国2座、大隈5座などにくらべると法外に多いこととはあきらかに齟齬をきたします。格づけと式内社数との乖離の理由はおそらく中央からの距離感というよりは、律令制確立当時の権力中枢と、それぞれの島国の族長たちとの遠近感が示されているように思えるので、こちらのほうは「聖トポロジィときのこ」あるいは「鬼の子の世界」の方面で追々とりあげていきたいと思っています。




今回は藤岡氏の労作を参考に主島に付属する島々を大きなものから順に眺めて私たちの抱いてきた島なみの常識をくつがえしてみるのも面白いと思うので以下に取り上げてみることにしましょう。
1位 択捉島(3,139㎢)、
2位 国後島(1,497.56㎢)、
3位 佐渡島 (856.6㎢)
4位 奄美大島(712.35㎢)
5位 対馬 (697.7㎢)
6位 淡路島 (592.9㎢)
7位 天草下島(571.2㎢)
8位 屋久島 (502.6㎢)
9位 種子島 (446.4㎢)
10位 福江島 (327.3㎢)
11位 西表島 (289.27㎢)
12位 色丹島 (255.12㎢)
13位 徳之島 (247.9㎢)
14位 隠岐島 (242.7㎢)
15位 天草上島(224.5㎢)
その他では
19位 平戸島 (165㎢)
21位 小豆島 (152.4㎢)
23位 壱岐島 (133.8㎢)
こうして眺めてみると瀬戸内に住む私たちの意識感覚ではすこぶる大きいと感じてきた淡路島をはじめ、伊予国一之宮大山祇神社のある大三島や周防大島などが列島弧の中では意外と小さく天草上・下島などが意外に大きいことに驚かされます。また北方領土の島々が地理の時間に教わった当時の感覚からすれば法外に大きいこともとても新鮮な発見でした。もちろん小さくても地政学的にみて重要な島は無数にあり、大きいからどうということはないのですが、島というものをみつめなおすひとつの尺度にはなりそうです。きのこのヘテロロジィ(Heterology of Kinoko)とは、まず自身のもっている固定したメジャーをフレキシブルなものにすげ替えることからはじまるので今後もこうしたものの見方はしばしば採用していきたいと思っています。
藤岡謙二郎氏「日本の島の歴史地理」歴史読本S50.8月号を参考に
Dr.Madaranov
by gallery_kinoko | 2008-11-03 17:36
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