映画『歩いても歩いても』 by Dr.Madarnov

☆当ブログ、2008年7月26日記事他で紹介させていただいた、コーコーヤ・黒川紗恵子さんも音楽で参加しておられる映画『歩いても歩いても』 が上映中です、映画館に出向いたDr.Madarnovが映画をお伝えします。

監督・原作・脚本・編集  是枝裕和
出演 阿部 寛、 夏川結衣、原田芳雄、
    高橋和也、田中祥平、樹木希林 YOU、
音楽 ゴンチチ  
配給 シネカノン2008    http://www.aruitemo.com/staff.html
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梅田ガーデンシネマ 8.31の事
 自他ともに「けな気やなぁ」と思わせる生き方をつらぬく市井人こそが私の理想であると前回述べましたが、それは実社会の中では、勝ち負けの世界の外で生きること、そしてどうしても避けられぬ事態に巻き込まれた場合でも、勝つことではなく決して負けないことに全精力を傾けて乗り切ること。「そんな積極的な弱者を第二の天性とするには、ぼくたちのようにいのちがけのしたたかさが必要だよ」と笑いながら私に教えてくれたのがほかならぬきのこだった。
ところが、このたび、そんな人間模様をさらりと描いた映画に出会ったのだ。相棒のTさんが、内容もさることながら、わが菌友のチチ松村さんと黒川紗恵子さんがバックミュージックを担当しているのでとにかく行きなさいと言われて取るものもとりあえずかけつけることにした。
映画にはまったくの門外漢だが、監督の是枝裕和という人は、なかなかの人物と見え、観客それぞれの人生をさりげない映像表現でくすぐりながら心の奥になんとなくわだかまっていたものをじんわりとほぐしてくれるようだ。作中で効果的に使われていた百日紅(さるすべり)の映像には、私にもささやかな家族の思い出があり、観終わって館外へ出ると、日常に立ち帰る自分のうしろ姿が透けて見える心地がして何ともさわやかだった。
筋立ては、ある夏の終わりに開業医だった父(原田)と母(樹木)のもとへ十五年前に水死した長男の命日に合わせて里帰りしてきた長女(YOU)とその家族、次男(阿部)と連れ子のある妻(夏川)それぞれの心模様を追ったたった一日のものがたりである。
しかし、監督も自ら語っているように、日本の夏なればこその数々のなつかしい風物で綴られていくこの映画には、ゴンチチの音楽はまさにはまり役だった。その屈託のない音世界は、それぞれの場面にしっとりとした陰影と質感を与え、映画全体にほんのりとした調和をもたらしている。あらためて彼らの力量に感じ入ったことだった。
クラリネットの黒川さんもうつり香のような存在感をとどめており、じっくりと聴きなおすべく思わずサントラ盤CDを買ってしまったくらいだ。
 映画のタイトルは、団塊の世代にはなじみの石田あゆみの『ブルーライトヨコハマ』のフレーズに由来しており、ニューミュージック全盛期のこの曲も、老夫婦にかってあった心中の漣(さざなみ)をしのばせるものだったと言うのが作中であきらかにされていくのは、実に愉快だった。
シネカノン配給の映画ということで、上映期間も時間もかなり限定的だが、どこかで目にとまったらぜひごらんになっていただきたいものだ。
(Dr.Madarnov 記)
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by gallery_kinoko | 2008-09-03 20:19 | 過去のおしらせ
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